書写の授業・すぐに取り組むことは


毛筆書写作品を一斉に教室の後ろに掲示してある光景は一般的な教室掲示です。子どもたちの頑張りを評価してやる点においても、子どもたちの絵や書写等作品を教室に掲示することの効果は大きいと思います。

子どもたちの描いた絵画は、描くものが違っていたり、同じものを描いても見る角度や色使いが変わるのでずいぶん印象が変わります。特別上手な子を除いてそんなに大きく見劣りすることはありません。しかし、毛筆
書写は「同じ文字」を「同じ半紙に同じ色(黒)」で書かれているため、その優劣は明らかです。例えば小学校6年生の掲示してある書写作品を小学校1年生の子が見ても「この字はへた」と分かるくらいですから、もちろん書いた本人にも「自分がうまく書けていないこと」はわかっています。

書写においては、教師が子どもたちの
頑張りを評価してやろうと思って行った掲示が、かえって子どもたちに劣等感を持たせてしまう危険性があります。

そこで、 自分がクラスの書写の授業を担当したとき、4月の早い段階で、すぐに取り組まなければならないことがあります。それは、クラスの中の書写に対して
苦手意識や劣等感を持っている子の作品を底上げし、その子たちの作品をひどく目立たないようにしてやることが大切です。苦手な子どもを急に上手くすることは難しいですが、目立たせなくすることは意外に簡単です。

私の経験から言うとクラス全員の毛筆作品を掲示したとき、
特に見劣りするのは次のような作品です。
@極端に線の細い作品
A極端に文字の小さい作品
B墨の少ないかすれた作品(雑に見える)


これらの原因はすべて
「大筆の手入れの悪るさ」にあります。
授業後丁寧に筆を洗ってないため、穂先がかちかちに固まってしまい、いくら押さえても太く書けないこと、穂に墨を含むことができないため、墨が続かず長い線が引けないこと、そしてすぐにかすれてしまうことです。「道具の準備・後片付け」のページに大筆の洗い方について書いていますのでご覧ください。

Bについては
、加えて「ゆっくり丁寧」に書かせることも大切です。子どもたちは特に「はらい」や「はね」の部分は極端に速く書くものだと思いこんでいます。しかし、それでは開いた筆が自然にまとまるスピードについていっていないため、筆先がまとまらない状態ではらってしまい、かすれてしまいます。「はらい」も「はね」も先に行くほどスピードを落としゆっくり丁寧に筆を運んだ方が筆先がまとまりやすいのです。

授業の初期段階では、とにかく「ゆっくり」を連発して
「ていねい」に書く習慣づけをします。
「落ち着かずいらいらしている子」「めんどうだからすぐに済ませたいと考えている子」「何も目的を持たずすぐに書こうとする子」をなくすことが重要です。
「上手な子が速く書いたものよりも、
うまくない子がゆっくり丁寧に書いたものの方が数段よい作品です。」
「100枚書いても、何も考えないでただ速く書いたとしたら、1枚目と100枚目はほとんど変化がなく、練習の成果は全く出ません。」「たとえ、5枚しか練習しなくても、
考えながらゆっくり書けば1枚ごとに字が整ってきて、5枚目には大きな変化が現れます」と少しおおげさに伝えながら指導していくと「雑でかすれた作品」が姿を消します。

正確に言うと、
運筆にはゆっくり書くところと勢いよく書くところがあるのですが、まずは「ゆっくり・ていねいに」から習慣づけをしたいものですね。