書写は毛筆だけの学習でよいか


書写の目的は学習指導要領にもある通り、子どもたちが日常の硬筆の文字を整えて書くことができるようにすることです。ですから、ただ手本を見て書かせるのではなく、算数で「公式」を教えるのと同じように、「文字を整えて書く原理原則(方法)」を学年に応じて段階的に理解し定着させることが大切な学習です。

原理原則を
「発見」し「理解」させるためには、文字を拡大して分析できる「毛筆」を使っての学習が効果的です。
「定着」させるためには、短時間で多くの文字を練習できる「硬筆」を使っての学習が効果的です。もちろん「硬筆」はより日常に近づいた学習でもあります。

つまり、「毛筆」も「硬筆」も書写の学習には大変有効な道具です。
「毛筆」だけの学習で完結すると、半紙で練習した文字(わずか数文字)だけしか整えて書くことができないことになり、文字を整えて書く原理原則(方法)の定着もできないのです。

また、
「硬筆」だけの学習では、文字を整えて書く原理原則(方法)を「発見」したり「理解」することが難しいのです。なぜなら、硬筆は文字が小さいために、児童の書いたものを黒板に示しながら話し合わせたり、考えさせたりする授業はできにくいからです。

どちらかの学習に偏ることなく、「毛筆」と「硬筆」をうまく連携させて書写の学習を進めることが大切なのです。
「毛筆」だけで書写を指導したと思うのは間違いです。
しかし、書写を学習する上で「毛筆」も欠かせない用具なのです。

 

<毛筆・硬筆関連指導の例>

○「画の長短」の原則について学ぶ授業例

@「毛筆」・・・課題「青」を使って、
「横画が複数ある場合は、1本だけ長くし、その他の横画はほぼ同じ長さにする」原則について学ぶ授業。
・原則に沿った「青」(1番下の横画だけ長く、上の2本を同じ長さのもの)と原則に沿っていない「青」(上から中・小・大と長さをすべて変えたもの)の
2つの文字例を比較して、どちらが良いかを考えさせ、原則を発見させる。
・「原則」を意識して書くと文字がどのように整うのか、
毛筆で大きく書いて確認させる。
                     
A「硬筆」・・・「横画の長短」の
原則が他の文字に応用できることを知り、原則が当てはまる多くの文字を練習することで原則の定着を図る授業

・「横画の長短」の原則を、3本の横画を含む他の漢字「羊・主・生」などに当てはめて確認させる。
・硬筆を使用して、「3本の横画の長短の原則」を使うことができる他の漢字をワークシート等で練習させる。
・日常の書写場面においても学習した原則を使えるようになるための学習方法を工夫する。