書写の時間だけで、すべての漢字の筆順指導はもちろん時間的に無理なことです。国語の新出漢字の指導時に 併せて指導すべきでしょう。 しかし、それでも筆順について定着できるように指導する時間確保は困難です。それでは、どう指導すればよいの でしょうか。 @教師が「筆順の間違えやすい漢字」を把握し、「間違えやすい漢字」を学習する際は特に丁寧に指導する。そう でない漢字については筆順指導に多くの時間をかけないことで時間確保をする。 A漢字の同系統の部分を持つ漢字については、筆順が同じであるからまとめて指導する。 B同系統の部分を持つ漢字が初めて登場するときに留意して指導する。 @については『書写書道教育研究・第16号』の「中学生を対象とした学年別漢字配当表所収全字種の 筆順調査結果と基礎分析」(萱原書房)で「蔵」が間違えやすい漢字の第1位となっています。以下「臓・収・座・済 ・衛・希・布・臨・状・覧・・・・」と続く。詳しくは是非同誌を見ていただきたいと思います。 子どもたちにとって「臣」を含む漢字の筆順が困難であることがわかる。また、「厂」や「ナ」を含む漢字の「横画」と「 たて画(はらい)」の筆順が困難であることもわかります。 このことから、Aについては「臣」の筆順を含む漢字をまとめて指導すれば、時間も短縮でき、理解もしやすいので す。 Bについては『漢字指導の手引き(久米公著)』の「筆順指導の考え方」(教育出版)で1年生で「43字」、2年生で 「42字」、3年生で「35字」、4年生で「18字」、5年生で「12字」、6年生で「11字」、中学校で「34字」、留意して 指導すべき漢字が示されています。詳しくは参照してみてください。 Aについてもう少し具体的に、以下例をあげます。 「くさかんむり」の筆順が多くの漢字の筆順に応用できる授業の実践(例) ○課題―「乗」(子どもたちが筆順を誤りやすい漢字) ○試書―筆順を教えないで半紙に1度だけ「乗」を書く。 ○筆順の法則を知るー「くさかんむり」の筆順を確認した後、「共」「編」「花」「算」 のカードを示して、他の文字に 応用できることを知る。この原則に従って「乗」の筆順を確認し、全員で空書する。 ○練習―筆順に気をつけて半紙に「乗」を練習する。 ○発展―毛筆で学習した筆順の原則を硬筆で他の文字に応用し、定着をさせる。 「くさかんむり」の筆順が応用できる漢字<67字> 「よこ・たて・たて」 ○1年生<2字> 花 草 ○2年生<4字> 形 黄 算 茶 ○3年生<17字> 横 荷 開 寒 期 苦 研 港 乗 世 昔 度 発 鼻 薬 葉 落 ○4年生<16字> 英 芽 械 旗 共 型 芸 菜 散 借 焼 席 帯 満 無 輪 ○5年生<10字> 基 護 構 講 備 編 弁 墓 暴 夢 ○6年生<18字> 異 革 供 敬 警 若 蒸 垂 蔵 臓 著 展 難 暮 幕 模 郵 論 「注意(似たもの)」 ○横画から縦画が下にでないものは「たて・たて・よこ」 首 前(2年)逆(5年)尊 並(6年) ○貫く横画は最後 冊(6年) 「乗」という課題の学習を発展して67文字の筆順の学習ができます。このように、同系統の部分を持つ漢字の筆順 をまとめて扱うことで、省エネ・短時間で学習できる工夫をすることが重要なのです。 |